33回(1955年上半期)

芥川龍之介賞

1955
公開日:
1/1/1955
イベントID:
396
対象書籍数:
1冊

対象書籍

白い人・黄色い人

白い人・黄色い人

新潮社

『海と毒薬』『沈黙』へと繋がっていく、遠藤周作の主題。 人間の心に巣食う「悪」と「赦し」を描いた芥川賞受賞作。 フランス人でありながらナチのゲシュタポの手先となった主人公は、ある日、旧友が同僚から拷問を受けているのを目にする。神のため、苦痛に耐える友。その姿を見て主人公は悪魔的、嗜虐的な行動を取り、己の醜態に酔いしれる(「白い人」)。神父を官憲に売り「キリスト」を試す若きクリスチャン(「黄色い人」)。 人間の悪魔性とは何か。神は誰を、何を救いたもうのか。芥川賞受賞。 目次 白い人黄色い人解説 山本健吉 本書収録「黄色い人」冒頭 神さまは宇宙にひとりでいられるのがとても淋しくなられたので人間を創ろうとお考えになりました。そこでパン粉を自分のお姿にかたどってこねられ竈(かまど)でやかれました。 あまり待ちどおしいので、五分もたたぬうちに竈をおあけになりました。もちろんできあがったのは、まだ生やけの真白な人間です。「仕方がない。わしはこれを白人とよぶことにしよう」と神さまはつぶやかれました。 本書「解説」より カトリック作家である氏にとって、当然もっとも大事な問題は、神の問題であります。キリスト教の伝統を持たない、日本という汎神論的風土において、神はどのような意味を持つかということです。あるいはまた、神を持たない日本人の精神的な悲惨、ないし醜悪を描くこと、と言ってもよいでしょう。 ――山本健吉(文芸評論家) 遠藤周作(1923-1996) 東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て1955年「白い人」で芥川賞を受賞。結核を患い何度も手術を受けながらも、旺盛な執筆活動を続けた。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品や歴史小説、戯曲、映画脚本、〈狐狸庵もの〉と称されるエッセイなど作品世界は多岐にわたる。『海と毒薬』(新潮社文学賞/毎日出版文化賞)『わたしが・棄てた・女』『沈黙』(谷崎潤一郎賞)『死海のほとり』『イエスの生涯』『キリストの誕生』(読売文学賞)『侍』(野間文芸賞)『女の一生』『スキャンダル』『深い河(ディープ・リバー)』(毎日芸術賞)『夫婦の一日』等。1995年には文化勲章を受章した。 続きを読む

ISBN-10: 4101123012
ISBN-13: 978-4101123011