43回(1960年上半期)

芥川龍之介賞

1960
公開日:
1/1/1960
イベントID:
406
対象書籍数:
1冊

対象書籍

夜と霧の隅で

夜と霧の隅で

新潮社

もう一つのアウシュヴィッツ――「安死術」。 ナチスの指令に抵抗する精神科医たちの苦悩と苦闘。芥川賞受賞作を含む、初期傑作5編。 第二次大戦末期、ナチスは不治の精神病者に安死術を施すことを決定した。その指令に抵抗して、不治の宣告から患者を救おうと、あらゆる治療を試み、ついに絶望的な脳手術まで行う精神科医たちの苦悩苦闘を描き、極限状況における人間の不安、矛盾を追究した芥川賞受賞の表題作。他に「岩尾根にて」「羽蟻のいる丘」等、透明な論理と香気を帯びた抒情が美しく融合した初期作品、全5編。 目次 岩尾根にて羽蟻のいる丘霊媒のいる町谿間にて夜と霧の隅で解説 埴谷雄高 本書「解説」より 人生においてあまりに多くのことを考察しなければならぬことを否応なく知っている北杜夫の文学は、当然、たとえそれが困難であるにせよ、考察する文学とならざるを得ないのである。そして、或る不思議な目標に執着する人間の精神の明暗の奥部を考察しようとするこの作品集は、いってみれば、現代という不気味な現実の前に提出されたところのさまざまな違った角度から書きあげることを試みられた精神解剖学序説といった趣きを呈している。 ――埴谷雄高(作家) 北杜夫(1927-2011) 東京青山生れ。旧制松本高校を経て、東北大学医学部を卒業。1960(昭和35)年、半年間の船医としての体験をもとに『どくとるマンボウ航海記』を刊行。同年、『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。その後、『楡家の人びと』(毎日出版文化賞)、『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)などの小説を発表する一方、ユーモアあふれるエッセイでも活躍した。父親斎藤茂吉の生涯をつづった「茂吉四部作」により大佛次郎賞受賞。 続きを読む

ISBN-10: 4101131015
ISBN-13: 978-4101131016